前回はWixに関する正直な感想を記事にしましたが、今回もWixについて実務対応していての経験と所感です。
(今回はもう少し専門的な話に踏み込んでいます。)
ブランディングを強化したい。Wixからのご相談
数ヶ月前、とある事業者さまから「Wixで作ったホームページを、もっとちゃんとしたものにリニューアルしたい」とご相談をいただきました。
お話を伺うと、
- 今後ブランディングに力を入れたい
- SNSや広告とも連携して、サイトも育てていきたい
- 見た目や導線も整理したいし、今のWixでは自由度に限界を感じている
というように、“しっかり運用して育てていく前提”のサイトにしたいというご要望でした。
ご相談の時点で、すでにWixの限界を感じておられ、
「今後はWordPressでしっかり構築したい」という意向や、今後の運用も見据えて、ある程度しっかりと予算をかけて取り組むご予定であることも伺っていました。
そのため、私からのご提案とも方向性が合っており、スムーズに制作方針を共有することができました。
構築自体はスムーズ。でも思わぬ落とし穴が…
構築そのものは問題なく進み、WordPressでの新サイトは、
- 表示スピードやモバイル対応もスッキリ
- オリジナルデザインで見た目も一新
- 記事や事業紹介なども整理し、ブランディングに沿った構成に
と、無事に仕上がりました。
ところが問題は「ドメインの引き継ぎ」の段階で起こりました。
Wix特有のドメイン移管の壁
もともとWixで使っていたのは、自社名などを含む「独自ドメイン」でした(例:www.〇〇.comのようなもの)。
それをそのままWordPressで使おうとしたのですが…
Wixの契約仕様によって、Wixの契約用に登録しているメールアドレスの設定と「ドメインの引き継ぎ」が自動で紐づいており、他社サーバーへ移す(=ドメイン移管)ための操作が一時的に制限(ドメインロック)されてしまったのです。
結果的に、60日間の解除期間を待つこともできないので、新しいドメインを取り直すということになりました。
(Wixサポートに問い合わせることで解消できることもあるようですが、お客様のご意向で今回は新しいドメインで行うことなりました。)
これは、一般的なレンタルサーバー(Xserverなど)であればあまり起きないトラブルで、Wix独自の仕組みが原因でした。
旧ドメインからのリダイレクトもひと苦労
それでも、旧ドメインにアクセスしたユーザーを、新しいサイトに自動転送する(リダイレクト)対応をしようとしました。
これが、また一筋縄ではいきません。
- 通常のサーバーなら
.htaccess
というファイルを使って、正式な転送設定(301リダイレクト)が可能です - しかしWixにはこれが使えず、代替手段としてJavaScriptを使った画面遷移処理を行う必要がありました
- いわゆる“裏技”に近い対応で、SEO評価の継続やGoogleの認識にも不安が残る方法です
先方にはあらかじめ事情をご説明し、「完全な理想形ではないが、できる範囲での対応」としてご了承いただきましたが、
「一般的には当然できることが、できない」というケースは、Wixでは決して少なくないと感じます。
最初にWixを選ぶということの“重さ”
この一件を通じて、あらためて実感しました。
Wixでサイトを作るというのは、“とりあえず作る”こと以上の重みがある選択。
「あとからちゃんと作り直せばいい」と軽く考えがちですが、実際には:
- ドメインやサーバーの制約による「移行しづらさ」
- 表示の構造や仕様の違い
- デザインの再構築や構成の再整理の手間
- SEO評価やリダイレクト対応の難しさ
など、“乗り換えるための労力”が、最初から作るのとほぼ同等か、それ以上になることもあるのです。
「まずはWixで」もアリだけど、前提が大切
もちろん、「まずはWixで最低限の情報だけ掲載して、名刺代わりに」という判断が悪いわけではありません。
ただしその場合も、
将来的にきちんと作り直す前提で、“仮設置”として使う意識が必要です。
ある程度サイトとして育ってから「もっと自由にカスタマイズしたい」「機能を追加したい」と思ったときに、
Wixではそのままでは実現が難しく、かえって足かせになるケースが多いのです。
終わりに:サイトの「未来」から逆算して選ぶ
今回のように、「最初は手軽に」と思っていた選択が、数年後に足かせになることは、Web制作の現場では珍しくありません。
私たちは、サイトの未来を一緒に考えながら“土台”をつくるお手伝いをしています。
「今の選択が、将来どう影響するか」を考えるきっかけになれば幸いです。
※今後、WordPressを選ぶ際の「既製テーマとオリジナル構築の違い」についても記事を公開予定です。
(じゃあ、WixではなくWordPressだったらなんでもいいのかというとそうでもない、というお話です。)